元が4つの体は存在するか?
問題を解くまでの経緯
『代数学入門』のp15にあった.期末対策にはならなそうだったので飛ばそうかとも思ったが,じゃあ今後試験の為の勉強だけしないのかと自問したら悔しくなったので解くことに.
予想
教科書に元数が1,2,3の体の例まで紹介されていたけど,4つは簡単に作れないようだった($ \mathbb{Z}/4\mathbb{Z}$ は整域ではない!)ので,存在しなさそう.
過程
とりあえず元が4つのアーベル群が少なそうだから乗法表で書き出してみる.元は,最終形が体であることを考慮して0,1,a,bとする.0と1が異なる元でないとしょうもない環になってしまうというのは青雪江でチラ見した(底辺数学科特有の断片的な知識)
表を埋めていく上で手がかりになることは
- 仮定から,0の行(列)はその相方と同じ
- 逆元の存在から,どの行(列)にも各元が一度ずつ現れる(ナンプレ)
- 可換性から,右上と左下がいい感じに一致
そういえば京都大学がナンプレ問題出してたなと思いつつ埋められるところを探す.全て書き出すと、
この3つ.①は一般の乗法に関する{$ 1,-1,i,-i $}や$ (\mathbb{Z}/8\mathbb{Z})^{\times}$ ,③は$ \mathbb{Z}/4\mathbb{Z}$など,同じ構造になっている例がパッと思い浮かぶけど,②の例が思いつかない.なんかあった気はするんだけどなぁ.
とりあえず加法の候補は絞れたので,次に乗法になる二項演算を考える.表のテンプレートは使い回せて,埋める上での手がかりは
- 仮定から,0の行(列)は全て0
- 仮定から,1の行(列)はその相方と同じ
- 逆元の存在から,1,a,bに関する$ 3\times 3$マスの表はナンプレ
これらの条件から埋めていったら,乗法表は一意だった.
しかも可換だった.本には,非可換体の例は難しいから省略,とされていたからそりゃそうか(ハミルトンの四元数体と向き合えない).
これで体の候補が3つに絞れた.あとは分配法則が成り立っていればよい.
0,1の仮定やら可換性とa,bの対称性やらで,次の6個が成立していれば十分
$ \begin{align} (1+1)\times a& = 1\times a + 1\times a \cr (1+a)\times a& = 1\times a + a\times a \cr (1+b)\times a& = 1\times a + b\times a \cr (a+a)\times a&= a\times a + a\times a \cr (a+b)\times a& = a\times a + b\times a \cr (b+b)\times a& = b\times a + b\times a \end{align}$
これ以上の簡略化を思いつかなかったので一つ一つ確かめる.
加法に①を採用したものは全て成り立った.求めていた体が一つ目から見つかったからミスを疑う.丁寧にやり直しても成り立っている.
と思っていたら,②③を採用したものは一番上の式から成り立たない.元が4つの体は一意なのか
結論
一意に存在する.加法,乗法に当る二項演算の表は載せた通り.ただ,親しんだ例が思い浮かばない.
以降
一般化して,元がn個の体について考えてみる.nが素数の場合に存在することは明らか(剰余群ちゃん)だけど,合成数の場合は見当もつかない.4の場合が特別だったりするのかな.
存在するっぽい.しかし,存在の証明に標数だ体の拡大だと言っており,ちょっと何言ってるか分からない.一意であるという文章は見当たらないから,もしかしたらどこかで勘違いしているかも
またさらに一般に,元の個数が素数のべき乗で表されていれば,体は存在するらしい.
追記
この追記を書くまで3時間かかった.疲れました